🙂 はじめに 🙂
当記事は、おもに中小企業・個人事業主で「発注先のホームページ制作業者を比較検討している方」に向けて書いています。部分的にでもお役に立てば幸いです。
不定期連載「制作会社とフリーランス」シリーズの2回目です
前回記事はコチラ ▼
業者選定の悩みどころ
高いもんから順に持ってこーい! ・・・ タイプの方は例外として、多くの場合
というニーズは、わりと普遍的なのかなと思います。
同時に
という心情もまた普遍的であるように感じております。
ホームページ制作の発注先は、大別して
- 制作会社
- フリーランス(個人)
に分けられ、費用的には大抵
制作会社 > フリーランス
であることをご存じの方は多いと思います。同じような規模・機能のホームページを作った場合でも、依頼先によって倍ぐらい価格差が出ることも。
フリーランスはなぜ割安?
理由としては、真っ先に固定費の違い(事務所家賃、人件費など)が挙げられます。
そして、打ち合わせから制作・納品・アフターフォローまでを『ひとり一貫体制』で対応することで、お客様には確実にコストメリットを提供できます。
大工さんに直接家を建ててもらう感じで…
たとえば、注文住宅を。。。
設計事務所や工務店を通さず、いきなり
営業打ち合わせ含め、設計から施工まで全部一人で出来る大工さんに、直接建ててもらったと仮定すると・・・
中間マージンが発生せず
【大工さんの原価+適正マージン】
で済むわけですから、安く上がりますよね。
こうして欲しい、ああして欲しいといった要望も、直接伝えられるので話が早いかと思います。
営業も・打ち合わせも・そして設計から施工まで、全部高いクオリティの仕事をするフリーランスは確実に存在します。玉石混交の業界ですが、良いフリーランスに巡り合い、直接サイトを作ってもらうことが出来れば「いいものを、お値打ちに」が実現します。
… が、フリーランス同士が複数人協業して分業体制で進める場合、結構なお値段になってしまうケースもあるというのはご存じでしょうか?
コスト要因は固定費だけじゃない
当方:ジュウロクデザインでは、お客様から直請けで・ひとり一貫体制で制作にあたることが多いです。
一部作業については、長男がアシスタントとして手伝ってくれています🙂
並行して(割合的には少ないですが)制作会社さんやコンサルタントさん、他のフリーランスからの依頼を受けて、分業体制での制作に加わるケースもあります。
両方を続けてきて、やはり分業体制の時は … どうしても説明や伝達のための工数が膨らみますし、その他もろもろ含め「うーん、仕事の構造的に高コストになりがちだよなぁコレ」という実感が強いです。
つまり、Web業界標準の分業ワークフローそのものが、高コスト化する構造的な要因を内包しているというジレンマがあります。 予算・工期をシッカリ確保できる規模の案件なら大丈夫なのですが、中小規模のオーダーに対して、作り手側の高コスト構造をお客様におっ被せるというのは … ちょっとアレです;
当記事では、限られた予算を上手く生かして『良いものを、お値打ちに』を実現し、かつ『安物買いの銭失いにならない』ためには? を、わかりやすく・たとえ話を交えて説明いたします。
それでは ・・・ レッツ本文!(・∀・)/
ハリウッド映画を作って欲しいのか否か
例えば、大作の映画。エンディング(スタッフロール)では、監督、脚本、演出、美術、CG、プログラミング、音楽 etc. 制作に関わった各パートの・数多くの人々の名前がズラっと表示されます。
たくさんの人々が・それぞれのポジションで・それなりの長期間制作に関与するわけですから、人件費は膨大になります。
一方、マンガや小説。関わるスタッフの数は映画に比べれば圧倒的に少ないわけですが、作品の本質的な面白さが映画に劣るかというと、そんなことはありません。むしろ、マンガや小説が映画化されるケースは多いですよね。
最近読んで面白かったやつ
オーケストラとシンガーソングライター
もし、音楽がお好きでしたら …
- フルオーケストラ
- 十数名で構成されるジャズビッグバンド
- 一般的な4~5人編成のロックバンド
- 最小構成の3ピースバンド
- 2人組のユニット
- 弾き語りのシンガーソングライター
あなたのお気に入りアーティストをイメージしてみていただけませんか?
音楽そのものの素晴らしさは、決して規模で優劣がつくものではないですよね。それぞれに心を揺さぶられるものがあるかと思います。
ビジネスとして考えた時、それぞれの人件費・コスト構造は … どんな感じでしょうか? 食べてゆくのに必要な売上・利益は、大規模編成と小規模編成でだいぶ異なることは想像に難くありません。
ホームページ制作における規模とコスト
ハリウッド映画とマンガ。オーケストラと弾き語り。
もうご察しと思いますが、Web制作においても似た構図があるのです。
あなたが求めるホームページは、
あなたがホームページに期待する費用対効果は、
それとも、マンガや小説的なものですか?
各パート専門のスタッフが(ハリウッド映画的に)分業で関わり、高コストである代わりに超スゴイ作品となったものを望みますか?
それとも、ひとり or 少数の手によって、限られた予算・時間・マンパワーを上手く配分して良好なコスパを得る方向性が … あなたのニーズに合っていますでしょうか?
前者であれば、名うての制作会社へ。
後者であれば、フリーランスへの依頼を検討いただくのもひとつだと思います。
コストを押し上げる要因・下げる要因
一般に、製造業において、分業は生産効率向上・品質(専門習熟度)向上・納期短縮のための手段ですよね。本来、コストダウンになるはず … なぜ逆に作用してしまうのでしょうか?
- 各専門領域のクオリティを追求し、職能の細分化が進んだ
- 必然的に1案件に対して関わるスタッフ数が増えた
- 閲覧デバイスが多様化し、対応すべきOS・ブラウザ・画面サイズが増えた
- 隣接工程に内容を伝達するための中間生成物・指示書などが複雑化した
現代のWeb制作で標準とされる分業体制・ワークフローそのものが(個々の工程の生産効率は高めつつも、全体としては)コストアップ方向に進んでいるように見えます。もちろん、予算・工期をシッカリ確保できる規模の案件にはそれがマッチするとは思いますが …
Web制作における分業体制
典型例です(PC:クリック拡大、スマホ:ピンチ操作拡大可)
工程の流れは、おおむね 赤、橙、黄 … の順に上流工程 ~ 下流工程となります。
- ディレクター ⇒ デザイナー には、ワイヤーフレームと呼ばれる設計図・指示書
- デザイナー ⇒ コーダー には、デザインカンプと呼ばれるデータ・指示書
という具合に、隣接工程に伝達するためのドキュメント(中間生成物)を作成します。
ワイヤーフレームやデザインカンプは(製造業における図面や仕様確認書がそうであるように)お客様との打ち合わせにも使用しますが、納品する成果物はあくまでWebサイトですので、分業プロセスの中間生成物といえます。
『デジタル製造業』と捉えていただくとわかりやすいでしょうか?
仮に、子ども向けの動くロボットおもちゃを作るとするならば
ディレクター | 営業 + 設計(上流工程:要件定義) + 生産管理 + 現場監督 + 品質保証 |
デザイナー | 意匠デザイン + 設計図作成(下流工程:CADオペレーター的作業まで) |
コーダー | 製造部: 設計図をもとに加工・組み立て |
フロントエンドエンジニア | 技術部: 目に見える動きをプログラム(ロケットパンチ発射とか) |
バックエンドエンジニア | 技術部: 目に見えない内部をプログラム(ラジコン操作を伝える回路など) |
ライター | ロボが喋る言葉を決めてレコーディング / 広告用キャッチコピー考案 |
マーケター・コンサル | 子どもウケが良く・競合他社に抜きんでる仕様を策定 / 発売後の広報・販促 |
みたいな感じになります。
ホームページ制作費が高いと感じるのは何故?
一般的な製造業であれば、量産効果で1個あたりの製造コストが下がり、販売価格はそれを反映した単価に設定されます。つまり、企画・開発コストは多数の購買客によって広く薄く負担される形になります。
しかしながら、『オーダーメイドで・一品ものを仕立てる』という性質を持つホームページの場合、全てのコストは『発注者である、そのお客様だけ』に負担いただく形となります。
電車・バスの運賃体系か、タクシーの運賃体系か、と考えていただいてもわかりやすいでしょうか。
制作費の見積をする際には、工程間伝達用のドキュメントやデータを作る工数、調整のミーティングに掛かる工数も含めて積算します。また、差戻しや手戻りなどのリカバリー工数もある程度は吸収できる余裕を持たせておくことがセオリーです。
分業体制により、それぞれの専門分野を突き詰めて技術・技能を高めやすくなったのは間違いありません。反面、量産効果が得られないホームページ制作においては(一般の製造業のような分業によるコストダウン効果はあまりなく)むしろ、高度な分業化が見積額・請求額を押し上げる構造的要因にもなっています。
そして、現代Web制作の分業体制・標準ワークフローで動く制作者側の多くは、(個々の作業効率を高めることにはカナリ熱心だとしても)、この ”包括的な高コスト構造” から脱却する流れではなさそう ・・・ 逆に、飽くなきクオリティを追求して、より高コストな方向に進んでいるような ・・・
こういったコスト構造の大部分は、発注者側には見えないわけですので ・・・
もっと言うならば、Web業界標準ワークフロー・作り手側の理屈をコストとして押し付けられても、そんなことお客様は知ったこっちゃないわけで ・・・
ゆえに、ホームページ制作費は「高い」と感じられることが多いのでは? というのが私見です。
だから、ひとりでやってるフリーランスは安いんだ?
打ち合わせから制作・納品・アフターフォローまでを『ひとり一貫体制』で対応することで、お客様には確実にコストメリットを提供できます🙂
冒頭に記した『営業対応・設計から施工まで全部一人で出来る大工さんに、直接頼んで家を建ててもらう』ように、中間マージンが発生せず【大工さんの原価+適正マージン】で済むため、廉価です。
もちろん、ひとり一貫体制も良いことずくめではありません。
広範囲のスキルセットを持つことになるため、1つの分野を突き詰めることについては専門家には及びません。総合格闘家がボクシングルールで試合をしたら分が悪いのと同じです。また、マンパワー的に1馬力ですから、直接請けられる案件はおのずと中小規模に限られます。
この点は、『ハリウッド映画とマンガ』 『オーケストラと弾き語り』 の構図を思い起こしていただけると理解しやすいのではと思います。
・・・・・・
さて、確かにフリーランスは皆ひとりで・個々人で動いているわけですが、
ひとりでサイト制作・運用の全工程を完結させられる人
は、発注者側が想像しているよりずっと数少ない … という事実は、意外と盲点かもしれません。
図:再掲(PC:クリック拡大、スマホ:ピンチ操作拡大可)
まるで簡単なことであるかのように『ひとり一貫体制』と述べてきましたが、これだけの守備範囲をひとりでこなすというのは … 結構ハードです。
サッカーで言えば「キーパー含む全ポジション対応」、格闘技ならば「打・投・極オールラウンダー」、音楽なら「ひとり多重録音で Vo・Gt・Ba・Dr をこなすマルチプレーヤー」みたいな感じでしょうか。
Web業界の趨勢、標準ワークフローは分業を基本としており、専門分野のスキルを高めること(スペシャリスト化)に価値を置くのが主流になっています。
フリーランスも然りで、ジェネラリスト(オールラウンダー)志向の人より、スペシャリスト志向の人が多い傾向にあります。 … 1:9 とか 2:8 ぐらいの割合? 感覚値で
前回記事 ▼ にて、そのあたり詳細に触れています。
したがって、複数人のフリーランスが協業して、分業体制でことにあたる場合が多くなります。当然ながら、中間伝達工数・工程を跨ぐ分だけの調整工数が発生し、それらはコストアップ要因となります。
先述の通り、僕自身はジェネラリストタイプで、全工程ひとりでやることが多いです。ありがたいことに、複数スキルの中での得意分野を見込まれて、チームの一員として仕事をさせていただくこともあります。
その実感として、やはり分業だと、ディレクター・隣接工程に対する伝達・確認のための工数、そしてディレクターを経由してお客様に確認を取っていただかなければならない「下からディレクション、間接ディレクション」的な工数がバカにならず、構造的に高コストだなぁ … と感じている次第です。
赤潮大発生、レッドオーシャン
近年の傾向として * 2022年11月現在
- フリーランス(特にWebデザイナー)を目指す人口の増大
- それを狙った初学者ビジネスの隆興(→「駆け出しフリーランス」急増)
- ココナラに代表される媒体に仕事を求める人々が殺到
などが顕著であり、フリーランス間の競争激化を招き、安さ勝負の傾向に拍車を掛けています。
かかる状況、発注者側にとってはどういう影響があるでしょうか?
ラッキーじゃん
安物買いの銭失いは避けたいなぁ
見方は人それぞれかと思いますが、
僕の目には … なんだかよろしくないものが渦巻いているように見えます。この性質の単価下落は「コストダウン」ではなく、「消耗戦」と言えるのではないかと。クリエティブな仕事をする人々の値段を叩きすぎた時、果たして品質は担保されるでしょうか … ?
安物買いの銭失いにならないためにも、制作者側も消耗・疲弊しない方法で … かつ、お客様の予算内で上手くやれるようなコストダウンを勘考するのがポイントだと思っています。
単価を下げずに、どうやってコストダウンするの?
オレオレ方法論になってしまい恐縮ですが、コストダウン手法をひとつ明かしますね。
同業者の皆さん、ここでブラウザを閉じてください … イイじゃん! と思ったら、記事下部のSNSシェアボタンをポチっていただければ嬉しいです🙂 逆に、こいつバカじゃね? と思ったら、晒さずに陰で嗤っててください 笑
その手法のひとつとは
即ち、Web制作の標準ワークフローを採らないこと。
です。
中間プロセス、中間生成物を思い切って省く。
ケースバイケースですが、手描きメモ程度の簡単なワイヤーフレームから(デザインカンプなしで)そのままエディタ・ブラウザ上でテストサイトを構築し、デザイン工程でかかるはずの費用を大幅にカットすることもあります。設計図なしで(マンガ図だけで)家を建てたり、ロボを造っちゃう感じですね。
もちろん、充分なヒアリングでデザインの方向性に確信的な合意形成が出来ている場合のことです。工程カットでのコストダウン分を機能面の充実に回すことができたりして喜ばれます😀
ひとり一貫体制であるがゆえに、工程間伝達のためのドキュメント類やミーティングは不要で、手戻りの予防やリカバリーもしやすく、プロセス全体が低コスト構造となります。良く言えば製造業のセル生産方式に似ていますし、卑下した言い方をするなら古典的なやり方です。
Web業界的には嗤われるかもですが … 成果物がお客様の重要事項を満たし、サイト訪問者(お客様のお客様や潜在客)にとって有用なものとなり、総じてコスパの良いサービスとなっているならば、全然OK!だと思ってます。
このあたりは、直請け主体・ひとり一貫体制ならではの(ガラパゴス的な?)特徴でしょうか。
フリーランスへの依頼を選択肢に入れるとき
良いフリーランスに出会うには?
中小企業の社長さんや個人事業主さんが、限られた予算で
『良いものを・お値打ちに』
『安物買いの銭失いにならない』
を求めるならば
Web業界標準の高コスト構造を当たり前と思っていない
かつ
安さ勝負の消耗戦にも参加していない
フリーランスを見つけて、問い合わせ ~ ざっくばらんに話を聞いてみるのが近道ではないかと思います。
急がば回れになるかもですが😅 結局、それが王道だと思う次第です
また、(メールだけでなく、電話した感じで)営業トークで塗り固められていないか、本音で腹を割って話せる人物かどうかもポイントじゃないかな? と考えます。
一括見積サイトやクラウドソーシングで探す手もありますが、光るものを持つ・引き合いの多い・行列のできるフリーランスは、それら媒体を使う必要性を感じていない(=そこには居ない)ことが多いのでは … と思いますよ。
ネット検索から歯医者さんやお医者さん、美容院などを探すときのように、何件かあたってみる労力を厭わなければ … きっと良い業者さんと巡り合えるのではないでしょうか?
僕が知っているだけでも、いい仕事をお値打ちにやっている同業者は複数存在しますから🙂
良い出会いがありますように!
(つづく … かも)
▼ 続きを書きました!よろしければドゾー